News緊急事態宣言延長後の対応について
当院は4月20日より診療体制の縮小を行ってまいりましたが、5月31日まで非常事態宣言が延長される事に伴う診療体制の変更についてご案内いたします。
現在、新型コロナウイルス感染症の収束の目途は立っておらず、依然として予断を許さない状況の中、診療体制を調整する為に縮小診療とさせて頂いております。
その間も代表チーフ及び感染対策委員にて、院内感染に対するリスクを軽減しながら診療を再開するための検討を重ねて参りました。それを踏まえた結果として、当院としては予約数の調整を行わせて頂きながら5月7日以降メインテナンスを含めた一般診療の再開を行う事と致しました。以下に私の考えをお示し致します。
・新型コロナウイルス感染症終息の見通しは立たないだろう。
つまり緊急事態宣言が解除されたとしても新型コロナウイルス(Covid19)が撲滅された訳ではなく、数年間に渡り警戒を必要とすることになるでしょう。歴史上完全に撲滅宣言が出された感染症は天然痘以外にありません。
では、いつになれば厚労省や東京都及び歯科医師会から「以前と同じように歯科医院に通院して下さい」という安全宣言が出るのでしょうか?
恐らくは出ないか、少なくとも短~中期的にはその様な通知が出る可能性は極めて低いと考えます。理由としては1件でも感染事例が生じた場合にマスメディア等に追及されるリスクを負う事になるからです。しかし、日本では4月30日までの調査で歯科受診による患者さんの新型コロナウイルス感染例は1件も報告されておりません。
2.不要不急の歯科医療とは何か。
私たち歯科医師の中にも多様な考え方が存在します。
「外出自粛中はあらゆる歯科治療も自粛するべきだ」
「不要不急の診療は差し控え、緊急性のある治療は実施するべき」
「歯科医療を通じての新型コロナウイルスの感染拡大例は一件もないので、十分な対策の上で従来通り診療を行うべきだ。」
「感染対策に関わる防護用品等は全て新型肺炎の治療に当たっている最前線に回すために歯科が使っている場合ではない」など。
果たして「何が正解なのか」という議論には結論が無いのだと私は考えます。物資の不足等は確かに深刻であり、我々も自らの診療所で必要とされる以上の物資を購入し、出来る範囲で協力をさせて頂いております。
当院がこれまでに行った寄付
4月20日 75%エタノール相当含有消毒剤18L 世田谷区医師会
4月23日 マスク4000枚 世田谷区
また、不要不急という考え方にも様々な解釈があると考えます。アメリカ歯科医師会では今回の感染爆発をうけ、歯科診療の必要性について以下の通りに区分されました(3月31日)。
・救急処置が必要なもの
・急を要する歯科治療が必要なもの
・不急といえる歯科治療
これらのなかで、「不急といえる歯科治療」について注目してみました。
Routine or non-urgent dental procedures includes but are not limited to:
• Initial or periodic oral examinations and recall visits, including routine radiographs
口腔内診察や歯周検査のための受診、ルーチンのエックス線検査を含むリコール
• Routine dental cleaning and preventive therapies
ルーチンのクリーニング、予防的処置
• Orthodontic procedures other than those to address acute issues (e.g. pain, infection, trauma) or other issues critically necessary to prevent harm to the patient
急性の問題(疼痛、感染、外傷など)に対処する以外の矯正治療
患者に危害が加わらないようにするための処置以外の矯正治療
• Extraction of asymptomatic teeth
症状のない歯の抜歯
• Restorative dentistry including treatment of asymptomatic carious lesions
症状のない部位のう蝕に対する修復処置
• Aesthetic dental procedures
審美治療
上記の中で「症状のない歯の抜歯」「審美治療」については確かに不急であると言えるでしょう。
しかし、その他に関しては一律に不急であるとの判断は困難です。例え症状が無くとも、穿通性のう蝕(急性の虫歯)などは月単位で著しい進行を示す場合があります。そういった場合、外見からでは判断が難しいのが特徴です。そういった点において定期的なエックス線撮影が無ければ発見が困難であり、撮影のタイミングを逃すことが患者さんにとっての不利益となる可能性が有ります。
また、矯正に関しても同様で、調整の時期を逸する事で治療計画に変更を余儀なくされる可能性を否定できません。
そして、私たちが最も重要であると考えているメインテナンスを含むプロフェッショナルケアについてです。私は開院以来「予防歯科」というものに最も重点をおいてきました。それには多くの理由があり、一言で言い表せるものではありません。これについては別の機会にご紹介したいと思います。
その予防歯科の中で最も重要な考え方の一つに「リスクに応じたリコール間隔」の設定というものがあります。一人ひとり、一本一本の歯ごとに虫歯、歯周病のリスクは異なります。
そのリスクに応じ「1か月~6か月」の期間を設定させて頂いております。この定期的なチェック及びセルフケア指導、リスク部位に対するプロフェッショナルケアこそが皆様の口腔を健康に保ち、本来不要な切削・抜歯・義歯・インプラントから守るための私たちの最も大切な仕事であると理解しております。
確かにひと月程度期間が変更されることで、明らかな変化が出ない方もいらっしゃるでしょう。
しかし、既に述べた様に1か月、2か月程度では今の新型コロナウイルス感染症が収束する目途が立たないと言われている現状では、数カ月プロフェッショナルケアを延期する事による新型コロナウイルス感染のリスクの低下よりも、後戻りのきかない歯科疾患の重症化リスクの方が懸念されます。
3.メインテナンス習慣が失われてゆく
確かに生命の維持という点では短期的には不急といえるかもしれません。しかし、これを機に今後不要不急だからという事で、「痛い」「取れた」「腫れた」といった時だけ歯科に行こうという風潮が広まる事により、ようやくここまで予防歯科にシフトしてきた日本の歯科医療が30年前に逆戻りすることを最も危惧しております。
4.患者さん想いの診療所ほど厳しい状況にある。
現在、マスメディア等による影響もあり、歯科衛生士によるメインテナンス等のプロフェッショナルケア離れが進んでおります。旧来の様に治療を主体として行っている歯科診療所においてはこの新型コロナウイルスによる影響は限定されている様です。しかし、当院の様な「疾病予防」を中心としたシステムを持つ歯科医院では、予防・管理に重点をおいている為に、大きな影響を受けているという皮肉な結果となっております。
緊急事態宣言を受け、診療の縮小を行ってまいりましたが、この状況が数カ月続けば不本意ながらこれまでの診療体制を維持する事は不可能です。当院に在職する素晴らしい熱意を持ったスタッフ達を万が一手放す事があれば、再び作り上げるには相当な年月を必要とするでしょう。
5. 口腔からウイルス感染予防
そして最近、歯科における感染症研究の第一人者である元国立感染症研究所の口腔科学部 部長 花田信弘先生や、東京歯科大学微生物学講座 名誉教授 奥田克爾先生らより、
・口腔内の環境を整えておくことがウイルス感染症に対して有効な予防手段である。https://www.nichigakushi.or.jp/news/pdf/corona_yobou.pdf
・「新型コロナウイルス感染伝播を抑えるために、舌の上のウイルス除去及び洗口剤でウイルスを失活させることが大切。」
・「歯周病菌などグラム陰性菌が産生する内毒素による新型コロナウイルス感染者のサイトカインストームを防止するために、これまで以上に歯磨き及びフロスを行い、続発する肺炎の予防のためにも歯周病の治療が必須です。歯科医院では従来とはレベルの違う高度な予防歯科でエンドトキシン血症を防止する事が大切です。」(歯科医師会への緊急提言)
といった提言がなされています。われわれ歯科医療従事者としては、適切な防護の下で安全な歯科医療を地域に提供し続ける責任があると考えております。
上記より、標準予防策に及びCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドラインに基づいた防護体制及び患者様間での感染リスク軽減のためのアポイント調整や診療内容の調整を行わせて頂きながら、「With コロナ」の時代の歯科診療を築いて参ります。
患者様におかれましてはご不安な点などもあるかと存じますが、ご不明な点につきましてはお気軽にお問い合わせ下さい。
一日も早く普段の日常が取り戻せる日が来ることを心より願っております。
皆様におかれましてもくれぐれもご自愛下さい。
令和2年5月6日
医療法人社団 百瀬歯科医院
理事長 百瀬智彦
世田谷区砧・成城の小児歯科・歯医者
医療法人社団 百瀬歯科医院